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ミネルバ大学という試み

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「ビリギャル」で有名な小林さやかさんが、アメリカの新しい大学について触れた。ミネルバ大学という所だ。

ameblo.jp

僕も以前から興味があって、名前をちらほら聞く大学だ。

現在の教育に変革を起こそうとここ数年で出来た新しい大学だ。大学のキャンパスは存在しない代わりに学生寮を用意して、学生は寮内でオンラインの講義を受けるという。そして学生は4年間を通して世界7カ国を旅しながら、現地で変化を起こす「何か」をする。

日本はもちろん、世界的に見てもまだまだ知名度が低い大学だが、卒業生を出してそれからどういう風に広まっていくのかが期待されている。

www.minerva.kgi.edu

www.futureedu.tokyo

 

小林さんのブログではミネルバすごいすごいって書かれていて他のサイトを読んでいてもそのような印象を受けるが、まだまだ改善できるところというか、不完全燃焼なところがあるんじゃないか。というよりも、新しい挑戦だからこそ疑問に思うことを発信すべきだと思うし、いいね!いいね!と連呼するだけでは挑戦にはならないのだ。

僕はこの大学のことを調べて、そもそも論として色々な疑問が浮かんだ。それはミネルバ大学だけに留まらず、教育全体として投げかけられる質問だと思う。

大学は職業学校なのか

ミネルバ大学を見て最初に思ったのは、ここは大学なのか職業学校なのかだ。大学によると、「雇用主はクリティカルシンキング、コミュニケーション能力と社交性を持っている人間を欲しがっている」らしく、他の大学とは違ってこの3つの能力を育むことに全力を入れているらしい。「知識を教えるのではなく、考え方を教える」という。

どうも、大学というのは雇用されるのが前提とされている機関だと勘違いしているのだ。

僕は大学を職業専門学校の付設校として営業することに否定的だ。本来、大学とは自分が興味のあることを追求することが目的であり、それを就職につなげるかは二の次にされるべきだ。

だから、新しい試みのはずが結局ハーバードなどのトップと言われる大学がやってることと同じ事をやっているミネルバを見てると「結局何をどうあがいても大学を職業学校として位置づけるしかないのか」と溜息が出る。

 

教育とカネ

学生は世界7カ国を旅し、その地域でプロジェクトを起こし変革を齎すカリキュラムだという。授業は午前中で終わらせ、教育の時間の大半を実習(プロジェクト)で費やすという。何事も知識武装ではなく現場百遍だと伝えたいのだろう。

正直なところ、これをするのならば学費を徴収するべきではないと思う。大学無償化をすべきかどうかという議論があるが、実際のところ私立大学が大学無償化に成功した例が米国では少なくともないため、これに関しては賛否両論がありそうだ。

ただ、インプットよりもアウトプットを学生に求めるのならば、学生に課金を求めるのは違うと思う。無理にロンドンやサンフランシスコなどの既に発展した街ではなく、途上国の僻地に放り込んで地域の助成金で学費を潤し、対価として街の発展させるプロジェクトを求めればいい。

ミネルバは学費が低いことを売りにしている。

Pythonを習うのにウン十万ドル払うのは馬鹿馬鹿しい」といって作り上げた大学だ。実際、Youtubeで過去の講義をタダで見たりすることが出来る時代にこんなにぼったくるのはアホだ。

市場価格と実際の知識の価値というのが大きくかけ離れているという主張はごもっともだし、それを批判するのももちろんだと思う。

だったら、学生にクオリティの高い労働をさせる代わりにカネを求めなければいい。クオリティの高い学生を呼んでいると言っているのだから、なおさらプロジェクトのクオリティは余計に高くなるだろう。そのプロジェクトに相当な対価を支払うのは当たり前のことじゃないか?Pythonを習うのに相当な対価を求めるのが当たり前のように。

 

エスタブリッシュメントと変わらない発想

上で少し触れたが、結果としてやってることがエスタブリッシュメントと変わらないな、と思う。

日本人が大学の「強さ」を測る時、恐らく最初に出すのは偏差値だと思う。これがどこまで正確に大学の姿を反映するのかはかなり疑問だが、実際に一番パッと来る数字は偏差値だろう(このブログのタイトルはもちろん風刺)。同じように、アメリカで大学の強さを測るときは合格率(Acceptance Rate)というのが使われる。数字の意味は全く違うが、ニュアンスがかなり似ている。

ミネルバ大学は宣伝文句で必ず「ハーバードよりも低い合格率」「ハーバードよりも安い」「ハーバードよりも留学生が多い」「アイビーリーグやオックスブリッジを蹴ってミネルバに来た学生」を売りにしている。

僕はこの宣伝文句を見るたびにちょっとがっかりする。なんでハーバードを引き合いに出して自分たちがエリートだと主張しなきゃいけないんだろう、と思う。

僕はミネルバ大学というのは忌々しい既得権益層が守ろうとする教育構造を壊すいわば第三の道だと思っていた。でも、見当違いなのかもしれない。

結局主張したいことは「我々は正しいことをしていて、それはハーバード大学を見ると一目瞭然です」ということだ。結局既得権益層と同じレールに乗らないとアピールが出来ないのは残念極まりないし、同じことをしているのにハーバードのやっていることを説教するのは図々しいにも程がある。

他人を蹴落として自分を高くする方法は嫌いだ。そういうことばかりする大人を何人も見てきたけど、ミネルバみたいな面白い取り組みをしているところには決してやってほしくない。

 

それでも嫌いになれない

ここまでけちょんけちょんに言っているから僕はミネルバアンチなのではないかと勘違いされそうだが、僕は決して否定的には見ていない。

正直、僕が指摘したことは言い方一つでガラッと変えられる程度のものだ。まあカネに関してはちょっと違うと思うけど。それでも致命的な問題ではない。

今の教育は無駄が多すぎる。無駄が多いくせに本質的に必要な問題は適当にやり過ごそうとする。ミネルバ大学ははっきりとそう主張した。そして僕はこれは正しいと思うし、ミネルバ大学の「無駄なところは決定的に潰し、本当に必要なリソースに回す」というところはとても好感が持てる。

「オンラインで授業をする」ことも手段だと聞いた時、かなりホッとした。しっかりと本質を見極めることが出来る人達が運営しているんだろうなというのが伺える。

あと、この大学は胡散臭さがない。他の大学がアピールする時、どうも同じことを繰り返して言ってるように聞こえて人工的なのだ。それがミネルバ大学にはまったくない。

誠意を持ってやるプロジェクトは胡散臭くない。ミネルバを作った人達は誠意を持ってやってるんだろうなあというのが伺えるし、そういったプロジェクトは嫌いになれない。

それでも、ミネルバ大学の噂を聞くと「いいね!いいね!」といった声しか聞こえないのはやはり問題だ。新しい挑戦だからこそ不具合が生まれるわけで、その不具合を指摘しないで広がってもコケるだけだ。

ここまで大々的に反逆する機関はほとんどないだろうから、みんなと同じことを言うのはちょっと違うなと思って少し書き出してみた。どちらにしても、議論を生む面白い試みだと思う。

www.j-cast.com