非技術者がUserStream停止危機を考察する
TwitterはUserStreams APIを8月に停止するらしい(正確には廃止ではないが、デベロパーが似たような機能を継続して使用するには月に何十万も払わなければいけないらしい)。
Site Streams and User Streams are being replaced by the Account Activity API which is now available in our developer portal. Developers without access can apply for an account to begin their migration. Please refer to our migration guide.https://t.co/FpWWKetm5e
— Twitter Dev (@TwitterDev) 2018年5月16日
元々は5月中に停止する予定だったのが6月まで延期になり、そしてまた延命したけど8月で完全に廃止される雲行き。
UserStreamが何かざっくり説明すると、サードパーティ製のTwitterクライアントでタイムラインが文字通り「川のように」流れる技術だ。自分でタイムラインを更新しないでも、誰かがツイートを更新したらリアルタイムでタイムラインが自動的に更新される。Tweetbot, TheWorld, YoruFukurouなどのアプリを使ってみたら分かるだろうが、特にフォローが多かったりフォロワーのツイート数が多い場合には非常にパワフルなのだ。
僕はTweetlogixというiOS向けのマイナーな有料クライアントを6年以上愛用しているが、UserStreamがなければここまで長く使うことはなかっただろう。僕はTwitterでの会話が8割型空中リプなので、タイムラインが自動更新されないと話している相手が何を言ってるのか見づらい。
特にスマホやデスクトップ版の公式クライアントはタイムライン表示がぐちゃぐちゃで兎に角タイムラインを追いかけるのが面倒くさい。それと比べ、UserStreamは更新された順に流れてくるので見やすい。
だからこそ、僕みたいに一日何時間もTLに張り付いてるユーザーからするとUserStreamの廃止というのはある意味死活問題なのだ。
UserStreamの廃止の延期が決まった時、Twitterのデベロパー向け広報アカウントが妙なツイートをした。
There’s no streaming connection capability as is used by only 1% of monthly active apps. Also there's no home timeline data. We have no plans to add that data to Account Activity API or create a new streaming service. However, home timeline data remains accessible via REST API.
— Twitter Dev (@TwitterDev) 2018年5月16日
UserStreamなどに置き換わるAccount Activity APIにはストリーミング機能がつかないという。そこまでは知っていることなのだが、何故ストリーミング機能を付けてないかというと「現在動いているアプリの内1%しか使っていないから」だそうだ。
僕はこの"アプリの内1%(1% of monthly active apps)"という表現が気になる。これが何を指しているか色々と解釈できるということだ。
これに関しては、有り得そうな:
- 現在ある全てのクライアントのうちの1%
- 全体のアクティビティのうち1%
- 全体の端末を見て、そのうちUserStream製のアプリを使っている割合が1%
の3通りに解釈できると思う。そしてそのままの意味で読めば1が正解なのだろうが、僕は3を暗示しているのではないかと推測する。
だって1に関してはすごく嘘っぽいんだもん。僕が知ってるクライアントは、公式のクソアプリ以外は大体UserStreamを使っているし、Favstarみたいな「TLを眺めるためのアプリ」でなくてもUserStreamに頼り切ってる部分がある。大体Twitterを使って面白いものを作ろうとするとタイムラインがリアルタイムで更新されないと困るものが多いんじゃないかな。
僕の発言を裏付ける証拠があるかって言われたらないんだけど、感覚的に今動いてるアプリの1%しかストリーミングを使ってないって言われたら流石に嘘だろと思ってしまう。
2に関しては"apps"という言葉をわざと使っているので多分違う。
だから僕は3を示してるのではないかと考えている。実際に考えてみたら、今動いているスマホやパソコンのうち1%しかUserStreamが入ってませんよって話だったら何となく想像がつく。僕の同級生とかがTwitterやる時は大体みんな公式アプリを使っているし、TheWorldとかShootingStarって言われても全く別の次元の話だと思う。
ここで何故TwitterがUserSteramを廃止するのか考えなければいけない。
技術的なことはよくわからないけれども、聞いた話だと兎に角今の使用がTwitter側のサーバーに負担がかかりすぎるから、負担を分散させるための新仕様が今回のAPIだという。
しかしTwitterは”アプリのうちの1%(Monthly active apps)”があたかも微々たるものかのように説明している。Twitterの説明を鵜呑みにする場合、サードパーティ製のクライアントがTwitter側に負担をかけているという主張と矛盾する。
サードパーティ製クライアントを使うのは誰か
ここからは仮説だが、Twitterの先程の告知ツイートはあながち嘘ではないが"Monthly active apps"のうち1%という表現が不適切だったのでは、と思う。
僕はTwitterがUserStreamを止める真の理由は、サードパーティ製クライアントのユーザーを無理矢理公式アプリに誘導し、広告で金をむしり取ることだと思っている。そしてその真意を隠すため、あのような不適切な表現をしたのだろうと考察する。
サードパーティ製のクライアントを使うユーザーが誰かと言うと、(自動だろうと主導だろうと)恐らく殆どが僕みたいに一日中TLに張り付いてる連中だろう。公式クライアントでも十分事足りるんだけど、やはり一日中使うとなると流石にカスタマイズしたくなるものだ。もちろん、ローソン公式のルーレットとかもUserStreamなしではありえない。
つまりサードパーティ製のクライアントのユーザーの頭数でみたら全体の1%でも、実際のアクティビティの量で見たらもっと多いはずなのだ。
そしてTwitter本社はその人達が公式アプリを使わないことにより広告収入を得ることが出来ない。この”失わた”広告収入を回収する方法は、サードパーティ製の魅力を潰して公式クライアントに移動させる他ないのだ。サードパーティ製アプリを使う大きなメリットの一つがUserStreamなこともあり、これを本社側が潰すと莫大な効果を生み出すこと間違いなしだ。
ローソン公式やソシャゲの一日一回プレゼント応募ルーレットとかは各自開発するだろうから、その都度金を巻き上げればいい。
公式アプリがUserStream非対応なことを踏まえると、Twitter本社からしてUserStreamはさぞ迷惑な機能なんだろうと察する。
つまり
TwitterがUserStreamを止める本当の理由は「負担がかかるから」ではなく「広告収入的に金にならないから」だとわかる。
個人的には、2012年以降毎度改悪される公式アプリの仕様にはウンザリしているが、まあ一応目をつぶることにしていた。一番アクセスしやすいのが公式なのだが、嫌ならばTweetlogixとYoruFukurouがあるので特別文句をいうことはなかった。
しかし最後の砦だったサードパーティ製ののクライアントの方までメスを入れるとなると、こちらも黙ってはいられない。何とかしてでも止めないとと思う。
あくまで主観でしかないが、Twitterが経営不振だというのならばUIの改悪を辞めて公式アプリをより魅力的にすべきである。時系列的にあべこべに表示されるタイムラインや”○○さんがいいねしました”のようなFacebookのパクリ仕様など誰も求めていない。こういう間違った選択を続けてきたからサードパーティー製のクライアントにユーザーが逃げていくのに、収入がないからサードパーティーを潰すってやり方には全く賛同できない。今回の件で受けたバッシングを元に反省してほしい。
#BreakingMyTwitter のハッシュタグで多くの人が本社の暴走を止めようと試行錯誤している。この話に共感した人は、Twitterでもっと多くの人にUserStream危機を広めてほしい。そして何より、UserStream停止が却下される(もしくは似たような機能を持つ技術の登場)ことを願う。
参考:
漫画村と出版社の”怠惰”
漫画村など違法に漫画・アニメ等のコンテンツがアップロードされたサイトを政府が”ブロッキング”すると決めた問題で、様々な議論が起こっている。
だいたいのことはほとんどのブロガーやマンガ業界の人達が言ってるはずなので僕が何かエントリーを作るつもりはなかったのだが、一つあまり誰も触れてないことがあるので軽くコメントしようと思う。
まず最初に菅官房長官がブロッキングの可能性を示唆した時、流石に脅し半分のジョークだろうと思った。そもそも法律が整ってないし検閲は違うよねって話は児ポの議論で大分されてたはずなので、まさか政府がそんなことを突然やるとは想像できなかった。
だからこのニュースを見た時、正直ひっくり返ってしまった。
僕個人の立場としては、少なくとも漫画村のコンテンツを読むこと自体に違法性はないという話をちょくちょく聞いているので、漫画村にアクセスする側のユーザーの選択を政府の都合で妨害するのはいかがなことかと疑う。違法なことをしているのはアップロードしている側なのでそっちを取り締まるべきで、「本屋で漫画を買う」「漫画喫茶で読む」「漫画村でタダで読む」という選択をすることは我々読者の自由だ。
僕自身は漫画村を使わず(アクセスしたこともない)普通に本屋で買っているが、それは別に漫画を買わないと漫画家が救われないみたいな偽善的な話ではなく、単にブラウザで漫画を読むと目が疲れるからだ。「男子高校生の日常」にハマってた小中学生時代にウェブ漫画を一時期購読していたが、長くは持たず泣く泣く紙の漫画を買った。
漫画家の印税が雀の涙だっていうのもわかるんだけど、こっちとしても紙の漫画は高すぎるし、もし目が疲れないでタダで読めるならタダで読みたいというのが正直な気持ちだ。
此処まで書いてもわからないかもしれないので一度話を整理すると、僕は漫画村を擁護しているわけではないし、正直漫画村もAnitubeもMiomioも全く使わないので潰れようと何だろうとどうでもいい。僕が言いたいのは、読者側として違法性がないものを政府の勝手で選択の自由を侵害することが間違っているということだ。取り締まるなら漫画村の運営側を取り締まるべきで、それが出来ないから読者の選択の自由を奪うという考え方には呆れ返ってる。
ところで、検閲だとか個人の自由の侵害だとか、そういったものに一番敏感に反応する業界というのはメディアであり出版社だ。
「第四の権力」とも呼ばれるメディアは権力に対する番犬(Watchdog)として機能しているため、権力が市民の権利を押さえつけるような行為や検閲のような言論・報道・表現の自由を脅かす事例を極端に嫌う。小学館や日経など、出版社がメディアをもっていたりメディアが出版したりする日本では出版社も同じような扱いになる。マスコミや出版界隈に政権に懐疑的な人が多いのも、ある意味当然の帰結だとわかる。
そしてもしも彼らが権力に屈せず表現や報道の自由を守る意識があったとしたら、このような検閲に関わる事情に対して「政府は権力を使って自由を脅かしている」というキャンペーンをするはずだ。政府が発表したウン千億円・ウン兆円の損害が何を根拠に言っているのか全く透明でないが、兎に角短期的なメリットばかり追うのではなく長期的に自分たちのビジョンに合っているのかを大衆にはっきりと示し世論を形成することもメディアと出版社の特権だ。
僕が見ている限り、出版業界も漫画家もあまりにも静かで驚いた。
特に講談社はびっくりするほど賛同している。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/180413_seimei_kaizokuban.pdf
また”緊急避難”であるこのブロッキングを導入するにあたり、カドカワや講談社のお偉いさんも意見交換会に出席したりと、今回の案件に深く関わっているのが伺える。彼らは自らの権利を主張する絶好の機会だと思わなかったのか?
そもそも”緊急避難”などする前に出来ることは山ほどあったはずだ。例えば、Netflixが多数の映画をいくらでも視聴できるようになってから、アメリカに置ける違法ダウンロードの数は激減したという。漫画やアニメだって似たような取り組みが出来たのではないか。
僕がさっき言ったように、漫画家やアニメーターが食っていくのに必要な金と消費者が払いたいと思う金額が全く釣り合ってないことだって些細な問題ではない。特に子どもが持ってる金なんてせいぜいお小遣い程度なので、大人の給料を基準に”漫画を買え!アニメは円盤買って見ろ!お前らがクリエーターを殺してる!”というのは少々無理がある気がする。
本当に政府が”クールジャパン”を根拠に漫画やアニメが重要な産業だと考えているのならば、子どもが買いやすいような値段で売れるよう出版社に補助金を出すことだって出来たはずだ。国が渋るのならば、出版社側が結託して経産省にお願いすればいい。ねとらぼみたいなサイトが漫画村の広告代理店を凸れるわけだから、出版側が頑張れば広告を止めるように訴えることだってできた。即興で言っても解決方法は出てくる。
先程から言っているように、読者側の行動に責任があるとは到底思えない。0円のコンテンツと500円の同じコンテンツがあったとしたら、僕のように特別な事情がない限り大抵の読者は0円の方を選ぶ。市場経済では当たり前の理論だ。問題は売り手がどのようにして500円のコンテンツを買うインセンティブを生み出すか、そしてどのようにして0円のコンテンツを潰すかということだ。僕は読者に問題がないと言っているが、当然0円のコンテンツを公開している人達には問題があるので。
まともな対策を講じなかったのに、現状の問題の責任を読者の行動になすりつけて"緊急避難"と呼ぶなど笑わせるなと思う。
少なくとも今回の案件だけで直接言論・表現の自由が脅かせるとは到底思えないが、何を根拠に海賊版サイトが経済的コストを生み出していると言うのか納得が行く説明をされてないので、この案件を元に”政府が不都合だと感じたものを’緊急避難’を根拠に一方的に遮断できる環境が整った”と言っても過言ではない。つまり、政府にとって不都合な記事を作ったり番組を作ったりした時に”緊急避難”だから弾圧するね、ということが出来ることになったのだ。
カドカワや講談社は、今回の決定で自身のコンテンツが”守られた”ことについてどう思っているのだろうか?ワイングラスでも回しながら、自分の本職を忘れてニヤニヤしていたのだろうか?
僕には特にこの2つの出版社がカモネギにしか見えない。”お前たちの利益は守ってやるよ、その代わり表現と出版の自由は没収な”と政府に言われてホイホイついていく怠け者でしかない。
政府としては、このような出版社にある意味「貸し」を作ったことになる。今後仮に今の政府が独裁政権チックに走ったとしても、そこに出版社やメディアが言論の自由を盾に口出しできない口実を作ったということだ。
政府の巧妙な罠によって、出版社や一部のメディアが政府の犬と化した今回の案件。それもこれも、漫画村村長や読者、ましては政府や自民党のせいではない。出版社があぐらをかいて自身の義務を忘れたことに起因する。
出版業界の連中は、いい加減自分たちが恥ずかしい存在であるということに気づいてほしい。漫画村を潰したことで鬼の首を取ったような態度をしているが、今後本当に政府がおかしなことをした時に最後の砦になるのは表現の自由であるということを忘れないでいただきたい。最後に困惑するのは他でもない彼らの読者だから。